「怠け者の森林経営」と呼ばれた森林管理のやり方が注目されている。
そのやり方は、林業の常識とは異なるスギの育て方だ。小さな女の子がくれた一言がヒントになった。
11月上旬、秋田市の郊外。秋田杉を生産する佐藤清太郎さん(78)に案内され、所有する「健康の森」に入ると、驚かされた。
明るく「紅葉するスギ林」
本来は暗さで覆われる常緑針葉樹のスギ林が明るい。
混ざって生える広葉樹のコナラやカエデが色づく。葉が落ちたすき間からは、光が差し込む。ちょうど同じ時期に遊びに来た園児たちが楽しそうに歓声をあげていた。
「紅葉するスギ林です」と佐藤さんは表現する。
この森は林業の常識から外れる、スギ6割と広葉樹4割の針広混交林だ。佐藤さんが40年ほどかけて育ててきた。
日本の森は元来、その土地にあった木々が育つ。だが戦後、復興のために木材需要が急騰した。そこで国は、広葉樹林を伐採し、建築用材として需要が見込まれ、成長が比較的早いスギなどの人工林を広げる拡大造林政策を進めてきた。
秋田県も毎年1万ヘクタールを造林する運動を展開し、スギ人工林の面積が日本一を誇る。
代々農林業を営む佐藤さんも長い年月をかけて、スギを一面に植えてきた。
最初は一般的な造林法にならっていた。スギの植林は1ヘクタールあたり3千本を碁盤の目のように1.8メートル間隔で植え付け、雑木を取り除く除伐のほか、間伐(間引き)を数回繰り返す。こうした保育作業を重ね、最終的に2千本を切り捨てて、70~100年かけて大木を育てる。
しかし、木材価格が1980年をピークに下落すると、山からの収入では造林や保全の費用を捻出できなくなった。人口減少で山村の働き手も減り、いまでは秋田県の人口減少率が全国一になっている。
佐藤さんはその頃から、山林をもっと生かせないかと、森の一部を一般の人たちに開放した。医師や学者、街に住む市民ら県内外の幅広い人と知り合い、長い目で森と人の関係を一緒に探った。
そして40年以上前から、森林浴をしたり、生物多様性を意識した森作りをしたり、子どもたちが森で遊びながら学んだりする「森の保育園」を開いてきた。
記事の後半では、佐藤さんが挑戦する、林業の常識とは外れた植林法について紹介します。そして、その森に列島に大きな被害をもたらす台風が襲来します。
そこで心に響いたのが、間引…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル